小麦粉についてマニアックな解説

パティシエになる

小麦粉の分類

「強力粉」と「薄力粉」では、いったいどこが違うのでしょう。

「強力粉」と「薄力粉」

「強力粉」と「薄力粉」は、小麦粉の種類の一つで、水を加えて練り合わせた時の「粘弾性」の強さによって分類されます。

これは、小麦粉に含まれているタンパク質の量が異なるためで、タンパク質を比較的多く含む「強力粉」は、生地の中で強いグルテンのネットワークを作り、非常にコシの強い生地に仕上がります。

一方、タンパク質含有量の少ない「薄力粉」は、生地の中にできるグルテンの量が少ないため、非常に軟らかくコシの弱い生地に仕上がります。

これは、原料とする小麦の種類によって決まります。

一般に、強力粉はタンパク質含有量の高い「硬質小麦」から、薄力粉はタンパク質含有量の低い「軟質小麦」から作られています。

タンパク質糖質脂質水分
薄力粉8.075.71.714.0
中力粉9.074.61.814.0
強力粉11.771.41.814.5
小麦粉の成分比較

「小麦粉」の原料

小麦粉は、小麦の種子の中身である「胚乳」と呼ばれる部分を細かく砕いて粉にしたものです。

小麦には、品種ごとに性質が異なるため、栽培地と品種の名前を組み合わせた名称が用いられます。

例えば、アメリカ産の軟質小麦で、種粒の色が赤く、秋に種子をまいて翌年の初夏に収穫を行うものは、「アメリカ産ソフト・レッド・ウインター」と呼ばれます。

また、タンパク質含有量が高く製パンに適した小麦としては、「アメリカ産ハード・レッド・スプリング」や「西部カナダ産ハード・レッド・スプリング」が、タンパク質含有量が低くケーキ類に適した小麦としては、「アメリカ産ソフト・ホワイト」が知られています。

ソフト・レッド・ウインター
ハード・レッド・スプリング
ソフト・ホワイト

小麦粉の製造法

「小麦粉」の製造法は、以下のような手順で行われます。

  1. 調質: 小麦に適度な湿り気を与えるために、水を加えて20~40時間静置する。
  2. 粗砕き: 目立てロールにかけて小麦を粗挽きにすることで、小麦の粒を「純粋な胚乳の破片(セモリナ)」と「外皮(胚乳が部分的に残っているもの)」に分割する。
  3. 分別: 篩にかけて、胚乳の破片と外皮を分別する。外皮にはまだかなりの胚乳が残っているので、再び粗砕きの工程に戻して同じ操作を繰り返す。
  4. 純化: 胚乳の破片の中に混入している不純物を取り除くため、風力を利用する。
  5. 粉砕: 段階的に製粉することで、純化された胚乳の破片を粉末状にする。一種類の小麦から数十種類の上り粉が得られる。
  6. 採り分け・仕上げ: 上り粉の品質を測定し、等級の異なる数種類の小麦粉に分類する。

打ち粉に強力粉を使うことが多いのはなぜか?

打ち粉というのは、お菓子の生地が作業台にくっつかないように、台の上に薄く振りまいて用いられる粉の総称です。

この目的に用いられる粉として、最も適しているのは強力粉だといわれています。

というのは、強力粉の粒子が粗くサラサラとした性質を持っているためです。

一方、薄力粉は粒子が細かくしっとりとした性質を持っており、ダマになりやすい性質を持っています。

小麦粉の粒子の大きさは、小麦の構造によって異なります。

小麦の「胚乳」は、小さな細胞がぎっしりと並んだもので、細胞の中には多数の「デンプン粒」と「細胞質」が詰まっています。

製粉機にかけると、細胞が破壊されて細かい「細胞の破片」ができます。

小麦粉の中には、この「細胞の破片」を含んだ粒子が多く含まれています。

硬質小麦から作られる強力粉は、細胞質が硬くデンプン粒に密着しているため、細胞の破片が大きくなってしまいます。

それに対して、タンパク質の少ない「軟質小麦」から作られる薄力粉は、細胞質が軟らかくデンプン粒と離れやすいため、細胞の破片が非常に細かくなります。

このため、強力粉はサラサラとしており、薄力粉はしっとりとしています。

特等粉と一等粉の違い

色沢繊維%ミネラル%酵素活性
特等粉優良0.1~0.20.3~0.4最も低い
一等粉0.2~0.30.4~0.45低い
二等粉0.4~0.60.45~0.65
末粉1.5~3.01.2~2.0高い

「特等粉」と「一等粉」は、小麦粉の品質によって分類されたものです。

小麦粉は、粉砕する段階によって品質が異なるため、その品質に応じて等級が付けられます。

特等粉は、最も高品質で、小麦の中心部分から作られます。

一方、一等粉は、特等粉よりも外皮や胚芽の混入が多く、少し品質が落ちますが、普通の家庭で使用するには十分な品質です。

二等粉、三等粉、末粉といった小麦粉の等級もありますが、品質が低くなるため、一般的にはあまり使用されません。

ただし、価格が安いため、一部の業務用途では使用されることもあります。

特等粉や一等粉は、色が白く、繊維分やミネラル類が少なく、酵素類の量が少ないため、菓子作りに適しています。

ただし、特等粉や一等粉は、品質が高いため、価格も高くなっています。

「パン専用粉」 「ケーキ専用粉」とは?

「パン専用粉」と「ケーキ専用粉」は、小麦粉の中でも使用目的を明確にした専用の小麦粉です。

従来の強力粉と薄力粉の分類とは異なり、「等級」と呼ばれる品質の分類方法によって分類されます。

強力粉は、水を加えると非常にコシの強い生地になるため、パンなどの作りに用いられます。

薄力粉は、水を加えると軟らかくコシの弱い生地になるため、ケーキやクッキーなどに用いられます。

しかし、「パン専用粉」と「ケーキ専用粉」は、それぞれの目的に特化した品質の小麦粉です。

たとえば、「パン専用粉」は、より高品質かつ製パンに適した小麦粉であり、「ケーキ専用粉」は、より高品質かつ高級なケーキに適した小麦粉です。

薄力粉中力粉準強力粉強力粉デュラム粉
特等粉カステラ
高級ケーキ
フランスパン高級ロールパン高級食パン高級マカロニ
一等粉ケーキ
饅頭
素麺高級菓子パン高級食パンマカロニ
二等粉一般菓子うどん
クラッカー
菓子パン
中華麺
食パンスパゲッティ
三等粉駄菓子かりんとう焼麩
かりんとう
生麩
末粉工業用
接着剤配合
工業用
接着剤配合
工業用
接着剤配合
工業用
接着剤配合
工業用
接着剤配合

これらの専用小麦粉は、業務用としては以前から存在していましたが、最近では家庭でもパンやケーキ作りが一般的になり、単一の目的に使用される小麦粉の消費量も増加しています。

そのため、特に品質が高く、目的に適した小麦粉を「パン専用粉」「ケーキ専用粉」として販売するようになったのです。

小麦粉のタンパク質 「グルテン」の形成

パンを充分に練らないと、ふっくらとおいしいパンにならないのはなぜなのか?

パンを作るときに生地を充分に練ることによって、小麦粉中のグルテンというタンパク質が伸びて弾力性を持ち、パンにボリュームとふんわりとした食感を与えるためです。

グルテンは、水と小麦粉の混合物が練りこまれると、細かい筋状の結合部分を形成します。

この結合部分が伸び、生地がふくらんで発酵していくことで、パンが膨らんで軽くふんわりとした食感に仕上がるのです。

しかし、生地を充分に練ることは、時間がかかり手間がかかるため、手軽さを求めて練り過ぎたり、短時間で焼いたりすることで、パンの食感や風味が損なわれることがあります。

適切な練り方と焼き方を心がけることで、よりおいしいパンを作ることができます。

そのようにして形成された「グルテン」は、パンを作る際に重要な役割を果たします。

練り上げることで「グルテン」の弾性や粘性が高まり、発酵時に発生する二酸化炭素ガスをしっかりと捕らえ、パン生地を膨らませることができます。

また、「グルテン」はパンを焼く際にも、しっかりとした骨格を作って形を保ち、ふんわりとした食感を実現します。

そのため、パンを作る際には、生地を十分に練り上げて「グルテン」を形成することが重要なポイントとなります。

「薄力粉」と「強力粉」の違い

「薄力粉」と「強力粉」の違いは、小麦粉の中に含まれるタンパク質の量が異なることによります。

薄力粉はタンパク質の含有量が少なく、強力粉はタンパク質の含有量が多いです。

この違いにより、生地の性質やパンの食感が変わります。

薄力粉の場合、グルテンは細長くつながっているため、その間にデンプン粒が埋め込まれた状態になります。

一方、強力粉の場合、グルテンは薄い膜状に広がっています。

パン生地の中で、グルテンの膜が酵母の発生した炭酸ガスを包み込んで膨らみます。

しかし、強力粉を使っても、グルテンの膜は十分に形成されない場合があります。

生地を充分に練り合わせ、グルテンのネットワークを成長させる必要があります。

グルテンが充分に形成された生地は、表面が非常になめらかでツヤがあり、両手でのばすと下の文字が透けて見えるほど薄くできます。

小麦粉のタンパク質 グルテンの「粘弾性」

「パイ生地」を必ず休ませた方が良いのはなぜなのか?

生地を練り合わせると、小麦粉中のタンパク質であるグルテンが水分と結合し、グルテンの弾性や粘性が増していきます。

そのため、生地を練りすぎるとグルテンが過剰に発達し、生地の弾力が強くなります。

このままでは、パイ生地が固くなってしまうため、生地を休ませることでグルテンの弾性や粘性を落ち着かせる必要があります。

生地を休ませることで、グルテンの粘性が変化していきます。

休ませる時間が長ければ長いほど、グルテンの粘性は低下していきます。

つまり、生地を休ませることでグルテンの弾性が弱くなり、生地が柔らかくなっていくのです。

この柔らかくなった生地を、パイ生地として使用することで、パイ生地はサクサクとした食感を得ることができます。

小麦粉に含まれるグルテンというタンパク質は、生地の骨格を作る重要な役割を持っています。

生地を無理にのばすとグルテンの構造が引き伸ばされてしまい、弾力が強くなります。

しかし、時間がたつとグルテンの構造が切れ、生地の弾力が弱くなり、のばしやすくなります。

強力粉で作った生地は最初の30分で半分以下の弾力になりますが、薄力粉で作った生地の場合は弾力が弱いので、パイ生地のように特に薄くのばす場合でも充分な弾力を取っておく必要があります。

生地を休ませて余分な弾力を弱めてから次の操作を行うことが上手な仕上がりにつながります。

小麦粉のタンパク質 グルテンと「生地の骨格」

パンの「ガス抜き」が必要な訳

パン生地の中には、グルテンというタンパク質が十分に形成されており、デンプン粒とパン酵母が混ざっています。

生地をこねることでグルテンが発達し、パン生地が弾力性を持つようになります。

しかし、この弾力性が強すぎると、パンの表面に気泡ができず、パンが重くなってしまいます。

そこで、生地をつぶすことで炭酸ガスを抜くことで、強すぎる弾力性を緩和し、気泡が形成されるためのスペースを作ることができます。

これにより、パンの「すだち」の形が整っていて、一定の大きさに揃っていることが重要な条件のひとつになります。

パン生地を発酵させると、酵母が炭酸ガスを発生させ、生地が膨らんでいきます。

しかし、このガスは、酵母と同じ数だけ気泡を形成するわけではありません。

実際には、気泡は生地を練る時に空気中か生地に取り込まれた「気泡」を中心にして集まり、それを核としてだんだん大きくなっていきます。

そのため、焼き上がったパンのすだちが粗くなるか、細かくなるかは、パン生地を練る時に取り込まれた気泡の数に大きく影響されます。

発酵を続けると、生地の中の気泡はますます大きくなっていきます。

そして、気泡の周囲にあるグルテンの膜がガスの圧力で押し広げられて、ちょうどゴム風船のように大きく膨らんでいきます。

しかし、この状態のままでは焼き上がったパンは、非常にきめの粗いものになってしまいます。

そこで、途中で軽く生地をつぶす操作、つまり「ガス抜き」が行われます。

この操作によって、ひとつの気泡がいくつにも分散され、全体の「気泡の数」は何倍にも増加します。

そして、この生地をさらに発酵させると、今度は数の増えた小さな気泡を核にして炭酸ガスが膨張するので、非常にきめの細かいふっくらとした生地に仕上がるのです。

最後に、気泡が膨らむ時、グルテンの膜は相当大きな力で引っ張られます。

もし、この時グルテンが充分にのびる力を持っていないと、グルテンの膜の薄い部分に穴があいて気泡が壊れてしまいます。

そのため、パンを作る場合には、できるだけ良質の強力粉を用いて、発酵前に生地を充分練っておく必要があります。

小麦粉のタンパク質 グルテンの性質と「食塩」

パン生地に必ずひとつまみの「塩」を加える訳

食塩はグルテンの形成を促進する役割を持っています。

グルテンは、小麦粉中のタンパク質の一種で、パン生地を練ることで発生します。

グルテンは、パンのかたさや弾力性、粘り気などの特性を決定する重要な成分であり、パン生地の発酵や焼き上がりの風味にも影響を与えます。

しかし、グルテンは水と反応して形成されるため、水分が多すぎるとグルテンがうまく形成されず、パンのかたさや弾力性が低下します。

ここで、食塩が重要な役割を果たします。

食塩を加えることで、水分がグルテンと反応しやすくなり、グルテンがより強く形成されます。

その結果、パン生地のかたさや弾力性が向上し、焼き上がりのパンがふっくらとした食感になるのです。

また、食塩には防腐効果もあるため、パンの保存性も向上します。

したがって、パンを作る時には、適量の食塩を加えることが非常に重要です。

ただし、食塩の量が多すぎると、パンの風味や食感に悪影響を与えることがあるため、適切な量を加えることが必要です。

小麦粉で作った生地のコシの強さやのびの良さは、グルテンの性質によって決まるため、パン生地には必ず食塩が加えられます。

食塩は、グルテンの性質に影響を与え、生地全体がよく締まって弾力があり、ダレる心配がありません。

ただし、食塩の添加量が多すぎると、パン酵母の発酵を抑えてしまうため、適量が必要です。

また、ビタミンCやカルシウムも、パン生地のコシを強くする作用があります。

ビタミンCは、グルテンの網目構造が成長するのを促進し、生地のコシを強くする作用があります。

カルシウムも、グルテンを引き締め、生地のコシを強くする作用があります。

ただし、カルシウムは単独で用いられることはほとんどなく、一般にイーストフードの主要成分として配合されます。

加える成分小麦タンパク質への影響生地の仕上がり使用例
硬化食塩グルテンのコシ強化生地のコシが強くなるパン・麺
硬化ビタミンCグルテンの形成促進生地のコシが強くなるパン
硬化カルシウム塩グルテンのコシ強化生地のコシが強くなるパン
軟化レモン汁・酢グルテンを溶けやすくするグルテンが柔らかくなり伸びやすい折込パイ
軟化アルコールグリアジンを溶けやすくするグルテンが柔らかくなり伸びやすい折込パイ
軟化サラダ油(液状油)グルテンの伸展性向上グルテンが柔らかくなり伸びやすい折込パイ
弱化バター(可塑性油脂)グルテン形成阻止生地のコシが弱り、脆くなるクッキー

小麦粉のタンパク質 グルテンの性質と「油脂」

シュトゥルーデル生地にサラダ油を加える訳

「シュトゥルーデル」というのは、オーストリアの伝統的なお菓子で、非常に薄くのばした小麦粉の生地の中に、りんごやレーズン、ナッツなどを巻き込んで焼き上げたものです。

このお菓子は、薄くのばした生地が特徴で、上手に作られると、まるで紙のように薄く、サクサクとした食感が楽しめます。

「シュトゥルーデル生地」は、ほかの生地と最も異なっている点は、生地の中に液状油が多量に加えられることです。

このように、液状油が生地に加えられることで、生地がより伸展性を持ち、薄くのばすことができます。

また、液状油が加えられることで、焼いた後の生地がよりサクサクとした食感に仕上がる効果もあります。

一般的に、シュトゥルーデル生地には、サラダ油や植物油が用いられます。

これは、動物性の脂肪よりも液状で、生地に均一に混ぜやすいためです。

ただし、シュトゥルーデル生地に加える油脂の種類や量は、職人の技術やレシピによって異なる場合があります。

一般的に、小麦粉で作られる生地の弾力や強度は、その中に含まれるタンパク質であるグルテンの量や質によって決まります。

グルテンは水と混ぜ合わせることで形成され、粘弾性を持ちます。

一方で、液状油はグルテン同士の結合を和らげ、滑らかな生地を作り出す効果があります。

サラダ油を加えた生地では、生地が柔らかくなり、グルテン同士の結合が減少するために伸展性が高くなります。

これにより、生地を薄くのばすことができるのです。

液状油には生地の柔軟性を高める効果もあるため、シュトゥルーデル生地は非常に薄く、軟らかく仕上がるのです。

生地に含まれる油脂の種類や量は、お菓子の種類によって生地の物性に大きな影響を与えます。

可塑性油脂はグルテンをバラバラに分断し、グルテンのネットワークを形成しないため、もろくサクサクとした口当たりの生地になります。

一方、液状油はグルテン同士の結合を減らし、生地を柔らかくするため、生地が薄くのばしやすくなります。

油脂を加えるタイミング

お菓子の種類によって、油脂を加える順番にも注意が必要です。

パン生地のようにグルテンを充分に形成させる場合には、油脂以外の材料をよく練り合わせ、グルテンがしっかりと形成された後に油脂を加えます。

一方、シュー生地のようにグルテンの形成をできるだけ抑制する場合には、最初の段階で必ず油脂を加えます。

これらのお菓子は、油脂の加える順番を間違えると、生地がうまく仕上がらないので注意が必要です。

油脂は生地の物性に大きく影響するため、お菓子を作る際には、材料の性質をよく理解し、適切に加えるように心がけましょう。

小麦粉のデンプン デンプンの「糊化」

シュー生地の湯が沸騰してから小麦粉を加えなくてはいけない訳

シュー生地を作る際には、以下の点に注意する必要があります。

  1. バターを完全に溶かす
    バターに含まれる油脂が小麦粉のグルテンの形成を抑制するため、バターを最初の段階で完全に溶かすことが必要です。
    バターが溶けていないと小麦粉が加えられた際にグルテンが形成され、シュー生地がうまく膨らまなくなります。
  2. 湯は沸騰させる
    小麦粉の中のデンプンを完全に糊化させるには、湯を沸騰させる必要があります。
    小麦のデンプンが糊化する温度は87℃以上であり、それ以下では完全に糊化しないため、湯を沸騰させることが重要です。
  3. 生地をすぐに焼く
    シュー生地は冷めると、デンプンが再び生の状態に戻り、生地全体が硬くなりすぎて膨らまなくなってしまいます。
    そのため、シュー生地をできるだけ早く絞り出して焼くことが必要です。
  4. 保温する
    どうしてもすぐにシュー生地を使えない場合には、保温することが大切です。
    保温することで、デンプンが再び生の状態に戻ることを防ぎ、シュー生地がうまく膨らむことができます。

以上の点を抑えて、良いシュー生地を作ることができます。
また、バターの代わりにラードやサラダ油を使用することもできますが、風味は異なることに注意してください。

デンプンの「糊化」

「デンプン」とは、原料である「片栗粉やコーンスターチ」などが、生の状態では水に溶けない性質を持っています。

これは、デンプンの中に含まれる「アミロース」と「アミロペクチン」という成分が、デンプン粒の中に密集していて、水分子が入り込む余地がないためです。

この状態を「ミセル構造」と呼びます。

しかし、デンプンに熱を加えると、ある温度以上になると急激に水分子を吸収して膨潤し始めます。

これは、熱エネルギーによって、ミセル構造がゆるみ、水分子がデンプン粒の中に侵入するからです。

加熱を続けると、デンプン粒がますます膨潤して、液体の粘度が高くなります。

この現象を「糊化(α化)」と呼びます。

デンプンの種類によって、糊化が始まる温度が異なります。

例えば、米やジャガイモのデンプンは比較的低い温度から糊化を開始しますが、トウモロコシや小麦のデンプンは糊化させるのにかなり高い温度を必要とします。

ジャガイモタピオカさつまいもとうもろこし小麦
糊化温度℃63.664.569.672.586.287.3
糊化粘度BU6801028340683260104
アミロペクチン%817583817570
アミロース%192517192530
デンプン粒の大きさμ2~85~1004~352~406~215~40

小麦粉のデンプン デンプンの「老化」

パンの保存は冷蔵よりも冷凍の方が良い訳

パンを保存する場合、冷凍の方が良い理由は、パンの老化を進める水分が凍ってしまうためです。

冷蔵庫に保存すると、パンの表面から水分が蒸発してパンが乾燥してしまい、パサパサになります。

また、冷蔵庫の温度が低いために、パンの中のデンプンが結晶化しやすく、パンが硬くなってしまいます。

一方、冷凍保存することで、余分な水分が凍ってしまうため、老化を進める水分がほとんど作用できなくなります。

また、冷凍保存することでパンの糊化が壊れることがありますが、再加熱することでパンを元の状態に戻すことができます。

パンの保存方法

焼きたてのパンを保存するには、急速に冷凍する方法が一般的です。

まず、焼きたてのパンを完全に冷めるまで置きます。

その後、パンをラップやジップロック袋に入れて、余分な空気を抜きながら密封します。

そして、冷凍庫に入れて急速に冷凍します。

解凍するときは、冷凍庫から出して常温で解凍するか、オーブンやトースターなどで再加熱することで、焼きたてのような状態に戻すことができます。

ただし、再加熱しすぎるとパンが乾燥してしまうので注意が必要です。

小麦粉と乳化剤

卵を加えて作ったパンが軟らかく焼き上がり、冷めても硬くなりにくい訳

パンを作る際に卵を加えると、主に卵黄に含まれる「レシチン」という乳化剤の作用によって、パンが軟らかくふっくらと焼き上がり、冷めても硬くなりにくいといわれています。

通常、焼き上がったパンの硬さは、生地の中に形成される「グルテンの粘弾性」と、デンプンが糊化するときにデンプン粒から流出した「アミロースの硬さ」によって決まります。

乳化剤は、これらの成分にそれぞれ結合して影響を与える性質を持っています。

具体的には、乳化剤はデンプン粒の吸水を抑制し、グルテンの吸水量を増加させる性質を持ちます。

同時に、乳化剤はグルテンに直接吸着して、その伸展性を高める特性を持っています。

そのため、乳化剤を加えたパン生地は、グルテンののびが良く、オーブンの中でもふっくらと大きく膨らみます。

一方、乳化剤は、デンプン粒の中に含まれるアミロースにも結合します。

普通、このアミロースは糊化と同時にデンプン粒の外に流出して、デンプン粒の隙間で硬いゲルを作る性質を持っていますが、乳化剤が結合した状態ではアミロースがデンプン粒の外に流れ出ることができないので、乳化剤を添加したパンは冷めてもあまり硬くならないのです。

このように、乳化剤は小麦粉の中のいろいろな成分に作用して、パンを軟らかくソフトに仕上げ、冷めても硬くなりにくい性質に変える効果を持っています。

したがって、パンを特に軟らかく仕上げたい場合には、一般に「パン用ショートニング」など多量の乳化剤を含む材料が配合されています。

乳化剤

「水」と「油」は本来混じり合いません。

これは、水と油が「極性」という性質に関してまったく逆の性質を持っているためです。

水は分子内に「極性」を持っており、電気的に分極しています。

油は分子内に「極性」を持っておらず、分極していません。

そのため、水と油は互いに引き合わないのです。

激しく攪拌しても、しばらくすると、また水と油に分離してしまいます。

ところが、これに「乳化剤」と呼ばれる物質を添加すると、水と油をうまく混ぜ合わせることができます。

乳化剤は、水と油の中間にある「親水基」と「親油基」という性質を持っています。

親水基は水に溶けやすく、親油基は油に溶けやすい性質を持っています。

乳化剤を加えると、水と油がうまく混ざり合い、「油滴」と「水滴」という細かい粒子ができます。

このような状態を「乳化状態」と呼びます。

たとえば、多量の水の中に、親水性の高い乳化剤と油を加えて激しく攪拌すると、油は周囲を乳化剤に保護された細かい「油滴」となって、水の中に分散することができます。

これを「水中油滴型」の乳化状態と呼びます。

牛乳・生クリーム・卵黄・マヨネーズなどに含まれている油脂は、ちょうどこのような乳化状態になっています。

一方、逆に多量の油の中に、親油性の高い乳化剤と水を加えて激しく攪拌すると、今度は水が周囲を乳化剤に保護された細かい「水滴」となって、油の中に分散することができます。

これを「油中水滴型」の乳化状態と呼びます。

バターやマーガリンの中に含まれている水分は、ちょうどこのような乳化状態になっています。

また、乳化剤には乳化作用以外にも、たとえば安定剤や増粘剤などの効果があります。

そのため、お菓子作りにも様々な面で利用されています。

効果利用例
油脂の乳化作用
クリーミング性向上
生地の中の油脂を細かい油滴状にし、うまく混ぜ合わせる
油脂のクリーミング性を高め、きめ細かく仕上げる
バターケーキ
アイスクリーム
デンプンの老化防止糊化するときに作用し、冷めても柔らかく糊化状態を維持菓子一般
卵白の起泡性向上卵白の表面張力を弱め、起泡性を高めふっくら柔らかく仕上げるスポンジケーキ
微粒子の分散微細な粒子を生地の液体や油脂中に分散させ、凝集防止チョコ・ココア

小麦粉のまとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ここで書いたことが全てではないですが、学生や若手にも分かりやすさを重視してます。

この知識があれば先輩の言ってることも理解できるようになるし、後輩に教える時も理論的に説明ができるので、今はよく分からなくても技術レベルが上がってくれば全てキチンと理解できますので、頭の中にでもしまっておいて下さい。

今回は小麦粉でしたが、今後もお菓子の重要な材料「砂糖」「卵」「油脂」についても解説していきますので乞うご期待ください。

最後に当店の想い

「大好きなキャラクターのケーキを食べてみたい」
「自分の顔をしたケーキがあったらなあ」
【PATE A CHOUX(パータシュー)】は、そんな夢のようなケーキを実現する、キャラクター・似顔絵ケーキの専門店です。
当店のパティシエは、これまで全国のケーキ屋さんで10年以上修業してまいりました。
その後「息子の誕生日ケーキをオリジナルでつくりたい」との思いから、何年も試行錯誤を繰り返し、当店のケーキをデザインすることに成功。
インパクトのあるチョコレートのイラストは、見て良し・割って良し・食べて良し!「きっと笑顔になれるケーキ」を目指し、3年かけて開発しました。
当店のケーキで、笑顔の輪を広げてもらえたら嬉しいです。

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